萩の乱 前原一誠とその一党 (増補)
松本二郎
 マツノ書店 復刻版
   1996年刊行 A5判 並製(ソフトカバー)函入 258頁 
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■明治維新が成って間もなく、新政府に対する反抗のノロシが、維新の原動力となった西南雄藩に上がった。「萩の乱」はその一つで、首領前原一誠は吉田松陰の有力な門弟である。長州を主軸とする新政府の膝元で起こった事件だけに、いっそう根強い矛盾と対立を示唆しており、明治維新の本質を探るための重要なテーマの一つでもある。
■著者の松本二郎氏は萩で育った郷上史家である、親族がこの乱に加わり、準幹部として自殺するなど、幼児からこの事変と深いかかわりを持っており、「一党の諸豪がなぜ決然と剣を取って起ち、鉄血、義血、侠血を注ぐに至ったかの真相を調べ、その心中の純なるものを伝えたいと思い、本書の執筆を思い立った」という。
■本書は、地の利を生かし、有り余る史料を整理、対照して、これまでの史書に伝えられているこの事変についての多くの誤りを指摘、訂正しながらその全貌を浮き彫りにした、「萩の乱」についてまとめられた唯一の本である。同時に、この乱と前後して起こった秋月の乱、熊本神風の乱、西南戦争などとの関連をも探っている。
■同郷人として、一党の人たちへの親近感や処刑者への弔意をもちながらも、著述は冷静、正確を期しているりまた対象をことさらに美化せず、まして悲憤慷慨や、ひいきの引き倒し的な臭味はまったく見られず、歴史家としての厳正な態度を貫いている。人物編、史料編なども、地元の学者ならではの綿密さで、本書の価値を高めている。


『増補 萩の乱』 略目次
第一章 萩の乱概説
第二章 乱の首脳者寸描
第三章 萩の乱前記

 @明治二年から六年まで
  前原参議兵部大輔となる  辞職の原因脱隊事件  政治家としての前原  故山に帰る  当時萩士族の状態
 A明治七年佐賀の乱と前原
  重要たる時点  木戸の帰県と諌早党
 B明治八年
  読書場開設  前原の上京  帰郷後の前原  前原の心境
 C明治九年
  同志者の離反  品川の帰郷と萩地静穏  風雲急なり  乃木・玉木兄弟の決別

第四章 萩の乱本記
 反乱起こる 殉国軍 党兵須佐に向かう 十月三十一日 十一月一日以後 事変中雑件 前原らの動静

第五章 萩の乱後記
第六章 萩の乱雑録雑感
第七章 反政府的な時代思想
第八章 松陰精神から考えて

第九章 人物編

 一党の人々 吉田松陰近親の人々 関係の人物 反対者諌早基清 まぼろしの英雄前原一格(冷泉増太郎) 関口県令の好評

第十章 関連した事件
 徳山暴動と思案橋の変

第十一章 萩の乱を題材とした謡曲・戯曲謡曲
 『七鬼落』品川弥次郎作戯曲 『前原一誠』三宅雪嶺作

第十二章 史料編『萩の乱』年表

引用書・関係書に関する所感

増補
 町田騒動顛末 大津郡における士族 吉田松陰の前原一誠評 西洋画大屏風 清水清太郎 奥平謙輔の奇智 会津人秋月悌次郎との交遊 山川総長の墓参